タムロンSP AF 28-75mm F/2.8 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO

長い製品名だけどタムロンの傑作レンズといってよいだろう。タムロンのレンズは何本か購入したけど、ほぼ25年ぶりの銘レンズとの遭遇だ。
最初に購入したタムロンのレンズは、今からほとんど30年ちかくも前に「鮮鋭タムロン」というキャッチフレーズで売り出していた、たしか75-210mm位のズームだ。当時、この焦点距離のズームレンズはカメラメーカーからは10万円ぐらいの物が出ていて、とても高校生には手の出る代物ではなかった。たとえば、キャノンの純正FDレンズは80-200mmというのが10万円ぐらいだったはずだ。高校生としては「鮮鋭タムロン」に望みをつなぐしかなく、春休みにバイトをして買ったのだけど、その「鮮鋭タムロン」は、値段相応(あるいは、それ以下?)という物だった。春先、水田の片隅に咲くタネツケバナの花を撮影し、結構な傑作が撮れたつもりで現像に出したのだが、サービス版サイズでも、タネツケバナの白い花が青紫のベールに囲まれていて、えらく失望したのを覚えている。
それでもお金のない学生の悲しさ、大学生の時に植物のマクロ撮影をしたくて購入したのも、純正のキャノンではなくて、タムロンだった。そのときに購入したのはSP90mmという有名なタムロンマクロレンズ第一世代目である。そのときは、まだこのレンズ、世に出て間が無い時だったのだが、その優秀さは1本目のフィルムを撮り終えたときからはっきりとわかった。「鮮鋭タムロン」のズームレンズとは全く異なる描写だった。そのうち、この90mmマクロの評判は世に広まり、何度ものモデルチェンジで熟成されて現在に至っている。このマクロレンズを購入したのが今から25年前。このレンズは大変気に入って、いつもカメラにつけて北は礼文島から南は西表島まで、あちこち出かけた。当時、このレンズで撮影したポジフィルムを、当時から比べればずっと贅沢になった現在の目で見ても、よく写っている。これだけよく描写されていれば、現在このレンズを新品として購入してもほとんど不満は無いだろう。
前置きが長くなったが、タムロンSP AF 28-75mm F/2.8 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO は、ほぼ同等の焦点距離F値のものをカメラメーカー純正で購入すると20万近く、またとても大きく重くなるところが、このレンズはわずか3,4万円。しかもコンパクトである。これだけ小さくてF2.8が実現されているのが信じられないような大きさである。肝心の写りはというと、これがすばらしい。デジカメの時代になり、レンズの評価が素人にも手軽にできるようになった。様々な焦点距離F値の組み合わせで撮影し、ピクセル等倍で描写を比較できるのだ。そのような嫌らしいテストをしても、このレンズはかなり優秀であることがわかる。また、実際のフィールドにおいても良い描写をしてくれる。フィールドで撮った写真のうち、これはという物はA3サイズにのばして部屋のドアに張っている。気づいてみるといつも2/3位がこのレンズで撮った写真になっている。もちろんレンズ単体の性能としては、単焦点マクロレンズやLシリーズの単焦点レンズがよいのだが、ズームでありながらシャープさ、アウトフォーカスの部分の素直な描写等々、ほれぼれとするほど良い描写をするこのレンズで撮った写真が結果としてお気に入りのものとなってしまうのであります。