驚きのミトコンドリアゲノム

昨日の論文講読会ではK子君がミトコンドリアゲノムを扱ったものを簡単に紹介してくれた。少し気になるところがあって、いろいろネットでの出会いを求めてうろうろしていると、驚きの論文と遭遇したのであった。
Bazin et al. (2006) Population size does not influence mitochondrial genetic diversity in amimals. Science 312: 570-572.
解説記事は
Eyre-Walker (2006) Size does not matter for mitochondrial DNA. Science 312: 537-538.
ボトルネックなどの条件がなければ、個体群サイズが大きいほど、保たれている遺伝的多様性は大きい傾向がある。これは誰もが認めることだろう。
Bazinらはデータベースに蓄積されている情報をもとに、個体群サイズ(実際に測定されていることは多くないので、生物タイプ毎に評価している。例えば、無脊椎動物の方が脊椎動物よりも、海産の生物の方が淡水性の生物よりも、個体群サイズが大きい等々)と遺伝的多様性の関係を調べたところ、核ゲノムでは、これまで考えられていたように個体群サイズが大きいものほど遺伝的多様性も高いという関係が認められた。
しかし、ミトコンドリアゲノムではその様な関係は認められず、個体群サイズは遺伝的多様性に影響していなかったというのだ!
この様な奇妙な結果をもたらした原因として、ミトコンドリアゲノムがほとんど組替えを起こさないため、ゲノム全体の運命が特定の適応的な遺伝子の影響を受けやすいという事が考えられる。ミトコンドリアゲノムが組み替えを起こさないということは、系統解析等では有利な点と見なされてきたのだが、生態研究や生物保全のために集団の遺伝的多様性を評価するにはミトコンドリアゲノムはあまり適切なものではないのかもしれない!?
組替えを起こしにくいという点では、葉緑体ゲノムも似たようなものだけれど、大丈夫か??