ついに出た

藻類30億年の自然史―藻類からみる生物進化

藻類30億年の自然史―藻類からみる生物進化

この著者にしてこの本有り、ついに出たか、待っていました、という本。
現在、私は主に森林の生物を対象とした研究をしているものの、20年以上前に単細胞性の藻類に関わっていた時期が3年間ある。その後、10年間のブランクを経て再び藻類の分類に触れてみると(とある大学で、生物学の集中講義を頼まれたので)、かつては日陰者の地味な研究対象であった藻類が、実は生物の多様性を研究する上で玉手箱のような存在となっていたことに驚かされた。
クロララクニオンだのハプト藻だの、聞き慣れないものが門扱いとなっているし、更に、オピストコント、盤状クリステ、ストラメノパイル、アルベオラータ等々、目も眩まんばかりの多様性と新たな解釈。たった10年間で大きく変わった日陰者を対象とした研究の面白さには、研究対象は変わってしまったものの、外野から楽しませてもらっていた。井上さんにも20年以上会っていませんが、直接的な藻類研究は行っていなくて藻類研究ウォッチングを趣味(?)とする傍観者の私には、井上さんはスタープレーヤーなのです。他にも何名かいらっしゃいます。当時は若い研究者、現在は立派なスタープレーヤーという方々。時の流れを感じます。
さて、それはともかく、そういった、最近の知見をまとめた本が出ないものかな、と思っていたのですが、出たのです、ついに。広告でタイトルと著者名を見たとたんに発注しました。
この本の著者、井上さんのホームページも大変楽しめる、情報量の多いものですが、この本は最近の藻類学(藻類だけでなくて生物多様性研究といっても良いかもしれない)のすばらしさ、興味深さを全てカバーしていると言っていいでしょう。それも、わかりやすく、面白く。この本は、私にとっては今年度最大の収穫といえる物であります。すばらしいです。