Let It Be... Naked

Let It Be Naked

Let It Be Naked

ビートルズの最後のアルバムLet It Beは、天才達も最後にはこのようなもので終わるのか(録音時期としては最高傑作Abbey Roadが最後だけれども)と思わせるヨレヨレ感漂う、なんだか情けないものだ。もちろん、名曲も含まれてはいるのだが。
そのようなアルバムになってしまったのにはいろいろ原因はあるのだろうが、何より評判の悪いのがフィル・スペクターの過剰なサウンド処理である。その余分な処理を取り去って、録音時の状態を再現したというのが、オリジナルから30年以上も後に発売されたLet It Be... Nakedだ。
しばらく前から気になっていたアルバムだったのだが、今日、初めて聴いてみた。確かに良い。特に良くなっているのが、Dig A PonyとかTwo of Usといった特上とは言えないような曲だ。Let It Beでは曲としてもイマイチな上に仕上げもイマイチ。何だか薄汚い作品だったが、Nakedではぴりりとした小気味よい小品となっている。
フィル・スペクターの蛇足として特に評判の悪かったThe Long and Winding Roadへのオーケストラや14名のコーラスも当然取り去られていて、ずいぶん印象の変わったものとなっている。でも、The Long and Winding Roadに関して言えばフィル・スペクターの甘ったるいアレンジもそんなに悪くはないと思うのだけれども。Let It Be... Nakedをすばらしいものにしているのは、オーケストラやコーラスを取り除いたことよりも、全体的な仕上げの丁寧さが効いていると思う。
Let It Beを聴く限りは、このようなアルバムを出すようでは、解散もやむなきことかな、と世の諸行無常すら感じてしまうのだが、Let It Be... Nakedにはそのようなものは微塵も感じさせない。絶好調のバンドの作品である。素材は同じものなのに。細部までの細心な仕上げがこれほどまでに差をもたらすという一例といえるだろう。
研究もそうかもなあ。そういえば、昨年読んだ最も感動的な研究にしても、あの素材を手にしたとして、万人が万人ともあのような印象的な結論を導き出せるかというと??だもんな。
今年は、時々Nakedでも聴いて、雑にならずに丁寧に、細心に行うよう、肝に銘じる事といたしましょう。