オーストラリアサンプル

共同研究者が送ってくれる海外からの生物試料の受け取りには、空港まで出向き、検疫、税関の手続きを行なければならない。何度もやっているとだんだん慣れてくるのだが、面倒なことには違いない。
最初の頃にはいろいろと不備もあった。例えば、税関では経済的な価値を申請して税金を払わなければならない。私たちが扱っているようなサンプルは、葉っぱだったり、虫けらだったり、ほ乳類の皮膚の切れっ端だったりで、経済的にはその価値は、試料が0ドル、容器が1ドルといったものだ。そのようなことは試料を見れば一目瞭然のことであり、税関でその旨を申し立てれば良いと思うでしょ?
ところがどっこい、そうはいかないのだ。ブツを送った側がproforma invoiceという一枚の書類を用意・同封して、経済的には数ドル以下のものでございます、と示さないと事は運ばないのだ。いくら目の前で実存する生身の人間が(私の事ね)試料を見せながら、同胞日本人の係官に説明してもダメなのだ。係官にしてみれば、これまで一度も会ったこともないし、これからも合うこともないであろう地球の反対半球に住んでいるはずの、それどころか実存するかどうかも知るすべもない人が作成した適当な様式のproforma invoiceという一枚の紙切れが重要であり、信頼に足るものなのだよ。
現地の共同研究者もこういう事は想像がつかないようで、これまで2回ほどこの書類がついていない荷物が空港に届いたことがある。空港の倉庫で荷物を受け取り、書類が同封されていないと冷や汗が噴き出てきます。いやマジで。書類不備だと最悪の場合、サンプル破棄だよ。
さて、そのような経緯があるので、先月、DFからサンプルを送る旨のメールがあったときも必要書類について事細かく説明をしておいた。で、そのことを忘れかけていた頃になって、いきなりやってきました。荷物が。研究室のドアの前に。手続き無しで。これは一体どういう事ですか。まあいいけど。

こんな箱がいきなりやってきたのです。

中の緩衝材とドライアイスを取り除くと、アイスクリームの箱に入れられたサンプルが!さすが、オージー、いい味しています。