高知の光

phyllos2010-01-30

1月も終わりになってきた。気温は一年の中で最も低い頃だが、光は力強くなってきた。高知市内には大きな街路樹の並んだ通りがある。冬にしては強い光が差し込んでいるのを見るのは嬉しい。
今日も、昨日に引き続いて高知。昨日のプロジェクトの研究成果を一般に公表する会がある。少し地味な内容で人は集まるのかなと思っていたのだが、驚くほど多くの人が参加していて、会場は満員だった。

プロジェクト会議

phyllos2010-01-29

といっても、自ら企画・参画しているものではなくて、外部評価委員として参加。
内容は、現在行っている研究と直接密接に関係するというものではないが、それでも、この類の会議では新たなネタや人との出会いがちょくちょくあるものだ。心して参加すべしというところでしょう。

うわさの地下牢

phyllos2010-01-27

相変わらずの、久々書き込みです。
年が変わって、バタバタしております。処理すべき書類も、大物から小物まで様々。特に査読依頼が多くて困っております。こういうのは、持ちつ持たれつなのだろうけれども、ちょっと能力を超えている気も、、、というわけで、編集者の方々よろしく(こんなところに日本語で書いても何の効果も見込めないのだが)。
先日は、その中の大物の一つを片付けに、写真の場所に。いろいろなブログでも出てくる、名高き「地下牢」へ。
「地下牢」実態はというと、電話無し、雑用無し、3時のおやつ付きという素晴らしいところでした。Kさんありがとうございました!

今週前半はJaLTER

phyllos2009-10-08

長野は菅平で行われたJaLTERのミーティングに出席してきた。会場となったのは、木材に満ちあふれた建物だった。
ゆっくりと雰囲気を味わいたいものだが、水曜日は午後3時から大学で欠席できない会議があるため、朝食後、早々に長野を後にする。
帰ってみれば、たくさんのメール。菅平の会場では無線LANが使えたのだが、私の古いパソコンではうまく受信できなかったのです。あれこれ対応しなければと思うのだが、台風18号が心配だ。というわけで、ほとんどを放りだしたまま帰宅。
本日は木曜日。今日はメール対応+電話の一日になりそうだ。あれはどうしたとお待ちの皆様、そういうわけです。既に電話をいただいた方もありますが、今しばらくご猶予を。

天下の快男児

国際協力プロジェクトとしてヒトゲノム解読が進められているときに、ベンチャー企業を率いて、国際チームと激しく競合した男。ベンター。
当時は様々な話を聞いたけど、ベンターの役回りとしては、善良なポパイとオリーブが楽しくすごしていた花園を、ブルートのごとくやってきて、かき回していった邪悪な奴、といったところか。

ヒトゲノムを解読した男 クレイグ・ベンター自伝

ヒトゲノムを解読した男 クレイグ・ベンター自伝

そのベンターによる自伝である。一読して、ベンターに対するイメージは180度変わってしまう。もちろん、この本のまえがきにもあるように、自叙伝には著者に都合の悪いことは何も書かれていないのかもしれない。
しかし、ここに書かれていることは、これまでゲノム解読競争で、私たちが聞いてきた、あるいは読んできた話とはかなり異なるものだ。そして、これを読んだ人は「極悪非道」のベンターの驚くべき半生に感嘆し、そして、大のファンになるだろう。まさに、天下の快男児である。
ベンターはDNA解読に当たって自らのDNAを提供している。このことに関しても、悪趣味だの、傲慢だのいろいろいわれていたが、その理由も書いてある。また、自分のゲノムの中で見つかった対立遺伝子(望ましいものもあれば、ベンターですら、ため息が出てしまうものもある)について、説明しながら、ゲノム計画が医療の進歩にもたらす可能性についても記述してあり、読者を飽きさせない。
とにかくこれは、ここしばらく読んだ本の中でも、もっとも興味深く、強い感銘を受けたものだ。
ところで、ゲノム解読競争を終えた後、ベンターは海洋中の微生物がもつ遺伝子についてメタゲノム解析を行っている。数年前に、その論文を見たとき、どうして海なんだ?と思ったのだけれども、その理由もこの本を読むとよくわかる。ベンターにとって、海にヨットで乗り込んでゆくことは、激しい日々の中で、心からの安らぎの源になっているのだ(とはいっても、何度も危ない目に遭っているのだが)。もちろん、海の中で数多くの驚くべき遺伝子を見つけてはいるのだけれども、PlosBiologyに発表している一連の論文は、採集場所をみると、こりゃ、半分趣味の採集旅行だよな〜、セイリングしたくて、研究したでしょと思ってしまうのである。

古いサンプルの楽しみ

古いたくさんのサンプルたち。どれを選んで解析すべきか。サンプリング場所をGPSデータをもとに地図に落とす。
もちろん、そんなことはずっと前から行っていた。白地図の上に種ごとに異なった印で場所を示して。
でも、もうちょっと分かり易いようにと、試しにGoogle Earthに点を落としてみたのだ。
Google Earthのすばらしさは皆さんご存じの通り。でも、特に目的がなくていじっていても、「地球上にはいろいろな地形があるものだ」、「人のインパクトは大きなものだ」、等々の感想ですんでしまうのだ。少なくとも私は。
しかし、数年前に大変な苦労をして訪れた数々の採集場所をGoogle Earthに落としてみれば、、、これは、全く別の悦楽があるのだった。
大スケールの地形が広がり、道のほとんど無い場所で、もちろん詳細な地図など入手できない。あるのは、その時にとったGPSデータだけ。そういうデータをGoogle Earthに入力すると、もはや二度と訪れることもあるまいと思っていた、あの地形、植生がスクリーン上に現れるのだ。
例えば、こんな。

詳細な地図があれば、時々等高線を眺めて、当時を思い起こすことができるのだろうが、もちろんそんなものはない。従って、地形は頭の中の記憶にあるのみ。そういう状態だったのだ。本日まで。しかし、本日午後に、スクリーンに現れたこの地形を見て、唸ってしまった。この地形は、まさに7年前の8月下旬、日も暮れかかった時間に、孤立した集団のサンプリングのために訪れたあの場所だ。
図の右下の部分で車を降りて、くるぶしまで埋まる砂道を急いで歩く。頼りになるのは1時間前に別れたレンジャーが描いてくれたいい加減な地図だけ。案の定、谷を間違えたりもした。あのときの思いがよみがえってくる。
そして、左上の部分に件の小群落があるのだが、驚くべき事に、

10本に満たない樹木で構成されている、その群落がしっかり写っているのだ。そうだ、この群落だ。薄暗くなった谷の中で見つけて、小躍りして駆け寄った群落は。
とまあ、たった一ヶ所でもこれだけ楽しめる。
本日は、専攻教授会、学会運営打ち合わせ、出版物編集打ち合わせ、依頼メール作成、等々、色々あったのだけれども、その合間を縫って、とりつかれたようにサンプリング場所のデータをGoogle Earthに入れてみた。そして、それぞれの場所で、深〜い感慨に耽ったのであった。
まあ、楽しみだけでなくて、普通の地図には載っていないような細かな地名も知ることができて、サンプルのデータファイルを分かり易く整理できるというのもGoogle Earthの良いところだ。記憶に残っている、地形との照合から、GPSデータの精度が怪しくなっているものまで見つけることができた。何という世の中だ!
さて、Google Earthはこれぐらいにして、、、Mさんの行っていたヤチシャジン解析も1週間でかなり良いデータがとれた。
あ〜、まだ書いて送っておくべきメールが色々あるなあ。さて、過去の世界から現実へ戻るとしよう。

良い論文とは

良い論文には二つのタイプがある。
一つは、なんというか、ミケランジェロダビデ像に対面したときのような気にさせるもの。想像を超えたすばらしさに、口は半開きで、声もなく、ただ感服してしまうのだが、まあ、彫刻家でないと大理石は彫れないだろう、と変に納得したりする。
もう一つのタイプは、そのアプローチを取り入れることで、自分自身のサンプルに対する理解がどの様に深まるのか、想像がかき立てられるもの。これから、なすべき事のリストが次々と浮かびあがってくる。そのうちのかなりのものが妄想に終わるのではあるけれども、こういった類の論文に出会えることは嬉しいことだ。
昨日の午後から読んでいる論文群は後者のタイプだ。