野外実習

宮島にて野外実習。
実習期間中、寝泊まりの場所となる宮島自然植物実験所は宮島の市街地から5km位離れた場所で、細い車道が1本あるのみ。フェリーから降りた学生達は市街地を抜け、徒歩でたどりつかなければならない。自炊が基本の実験所で過ごすためには、学生他33名の食材等、段取りがいろいろ必要なのだが、参加した2年生や、手伝ってくれた我が研究室の学生達のほとんど完璧ともいえる働きのおかげで、無事行うことができた。
2日目は、植物観察をしながら弥山山頂まで往復するというものだったが、なかなかハードだった。宮島は、世界遺産となっている原生林以外の場所は、比較的樹高の低い、ちょっと見た目には荒れた感じの森林が広がっている。しかし、古くから神聖な島として取り扱われてきただけあって、そのような場所にも、対岸や近くの瀬戸内の島ではほとんど見られない植物が歩道沿いに見られる。たとえば、カンザブロウノキ、ミミズバイ、タイミンタチバナ、ホウロクイチゴ、サカキガズラ、コバンモチ、ヤマモガシなど。
シカが多いことと、水田を主体とした里山の農業がほとんど行われてこなかったことから、他の場所ではごく普通である種が欠落あるいは非常に希であることも興味深い。例えば、ネザサ、フジ、コナラ、ナツハゼ、ウツボグサ、ササクサ、ヒガンバナツリガネニンジンなど。本土側とは数百メートルしか離れていないのに、このような普通種が欠落(or 希)なのだ。
今回の実習のテーマの一つは特定のグループの樹木について識別が出来るようになることだ。ブナ科の樹木、ウバメガシ、アラカシ、ウラジロガシ、アカガシ、ツクバネガシ、シリブカガシ、シイが歩道沿いに生育しているので、それぞれの違いを観察しながら歩いてもらった。このような識別が可能になると、それまではただ単に緑色にしか見えなかった森林から、一つ一つの樹種が立って見えてくるようになる、と思って行ったのだが、さて成果はどうかな??
ブナ科の他に宮島ではハイノキ科の植物も比較的種集が多いので、こちらも重点的に説明した。ハイノキ、クロバイ、ミミズバイ、カンザブロウノキ、クロキ、シロバイ等々。
弥山山頂まで足を伸ばした日の夜は野外で寝た。波の音を聞きながら夜をすごし、うっすらと明るくなる空で朝を知る、ということを夢見ていたのだが、疲れのあまり爆睡状態で、波の音を味わえなかったのが残念!